すもーくふりー図書館

「JT、財務省、タバコ利権:日本最後の巨大利権の闇」松沢成文著

この書物には、あまり記述されていませんが、少しタバコの歴史を遡ってみます。
古来の日本にはタバコは存在しませんでした。安土桃山時代にポルトガル人が持ってきたと言われています。400余年前です。徳川家康はじめ江戸幕府は、幾度もなく禁煙令を発令しました。
主目的は、火事の抑止と中毒の蔓延阻止です。かぶき者(アウトロー)の象徴としてもてはやされいたこともあって、幕府も気にかけていたということです。
貝原益軒は、既に健康被害を認識し、その害を「養生訓」で唱えていますが、当時の幕府の関心は健康問題ではなかったようです。幾度となく発令された禁煙令も、結局は遵守されることはなく、子供も含む大半の市民が喫煙者になっていきました。水戸光圀のように、タバコを産業振興に活用した為政者、経営者もいました。これが、水府タバコです。水府とは、朝ドラの舞台、奥茨城村(架空の村ですが、今の常陸太田市がモデル)あたりです。
さらに恐ろしいのは、この後、明治時代です。日露戦争の戦費捻出のため、タバコ産業を国有化、専売化するという変遷を辿ります。この頃、未成年の喫煙が禁止となりましたが、その理由は、肺に疾患があると軍人として問題だから、という説があります。
日露戦争の是非はさておき、健康被害に目を背けながら、中毒性を利用して販売を強化、独占し、税収を増加させ、戦費に充てる、という前時代的な国家経営そのものです。

問題は、21世紀になっても、姿を多少変えながらも、その仕組み自体がゾンビのように生き続けていることです。三公社とは、他に旧国鉄、旧電電公社ですが、JTは未だに前時代的な仕組みを色濃く残しています。
後は、「JT、財務省、タバコ利権」を読んでいただけるとよく分かります。

読後感としては、あらためてですが、「喫煙権の主張には正当性はないし、説得力もない」ということです。

読み終えた後は、2度と喫煙可能な飲食店に入りたいとは思わなくなるでしょう。

 

「受動喫煙防止条例ー日本初、神奈川発の挑戦」松沢成文著

神奈川県が全国初の受動喫煙防止条例を成立させるまでのドキュメンタリーです。

喫煙の害に関する深い深い見識を基に、壮絶な抵抗や妨害等、様々な困難を乗り越えて、不屈の闘志と情熱で自らの信念を貫いた松沢知事(当時)のファイトと行動力には、脱帽です。

条例が施行後、どれだけの実効が上がっているのかについては、罰金徴収の実績が上がっていないなど、まだ心理的抑制策にとどまっているとの見方もありますが、受動喫煙撲滅に向けた大きな前進であることに違いありません。

 

「喫煙と禁煙の健康経済学:タバコが明かす人間の本性」新井一博著

最近の一連の議論を見聞きしていると、健康問題VS飲食点経営、健康問題VS喫煙する権利といった風に、焦点が噛み合わないような気がします。

この新書は、喫煙者、非喫煙者にかかわらず、一度は読んで損はない書物です。統計データを丁寧に、且つ、フェアに活用しつつ、経済学視点での仮説を用いて、示唆に富んだ内容になっています。喫煙者の行動、禁煙への政策、等々に対して経済学の視点から見事に読み解いている名著だと思います。

タバコによって生じている外部不経済についても、ほぼ残らず俎上に乗っており、限られたデータを使って問題を矮小化することや、自己主張のぶつかり合いで堂々巡りしていく議論、が全く合理的でないことを、良く解らせてくれます。
 
一つ残念なことは、何故かこの分野の経済学は日本においては発展が遅れており、多くの統計データがアメリカを筆頭にした欧米のものだということです。

著者の荒井一博さんは、やはり過去喫煙者でした。禁煙の実体験も記述されており、この部分も納得感があります。